一般社団法人日本産業車両協会の集計によると、フォークリフトに起因する休業4日以上の死傷災害は2023年に1,989件発生しています。社用車でも、ある民間企業の調査では過半数の法人で年間1件以上の事故が起きています。本記事では双方の事故の現状と原因を確認し、現場で守るべき基本行動と安全教育のアプローチを整理します。
フォークリフト・社用車事故の現状
対策を考える前に、何がどれだけ起きているのかを公表データで確認します。事故の「型」まで押さえると、優先すべき対策の順番が見えてきます。
フォークリフトの事故件数の現状・推移
日本産業車両協会「フォークリフトに起因する労働災害の発生状況―厚生労働省労働災害統計より―」によると、フォークリフトに起因する休業4日以上の死傷災害は、2023年(1〜12月・確定値)で1,989件でした。2022年の2,092件から103件の減少です。
注目すべきは事故の型です。2023年の内訳では、「はさまれ・巻き込まれ」と「激突され」の2類型で1,236件を占めます。
[表1]フォークリフトに起因する死傷災害の事故型別件数(2023年・確定値)
| 事故の型 | 2023年(件) | 2022年(件) | 差異 |
| はさまれ・巻き込まれ | 689 | 753 | -64 |
| 激突され | 547 | 593 | -46 |
| 墜落・転落 | 232 | 220 | +12 |
| 激突 | 188 | 162 | +26 |
| 飛来・落下 | 111 | 122 | -11 |
| 転倒 | 111 | 137 | -26 |
| 動作の反動・無理な動作 | 54 | 59 | -5 |
| 崩壊・倒壊 | 40 | 29 | +11 |
| その他 | 17 | 17 | ±0 |
| 合計 | 1,989 | 2,092 | -103 |
出典:一般社団法人日本産業車両協会「フォークリフトに起因する労働災害の発生状況―厚生労働省労働災害統計より―」をもとに作成。
同協会の分析では、この2類型が死傷災害に占める割合は62.7%です。ところが死亡災害では40.7%にとどまり、「転倒」+「墜落・転落」が35.2%と死傷災害での割合より高くなります。件数の多い事故と命に関わる事故は一致しないということです。
社用車の事故の実態は
全国の法人車両管理者・ドライバーを対象とした、ある民間企業の調査(2024年実施、有効回収数9,945サンプル)では、年間の社用車事故件数(こすり傷を含む)について「ほぼ事故はない」は33.0%にとどまり、年間1件以上との回答が過半数を占めました。101件以上も2.6%あります。
同じ調査では、車両管理の課題として「事故防止・安全運転の推進」が51%で最多、次いで「法令遵守」が46%でした。一方でツール・システムは「いずれも活用していない」が22%あり、必要性は認識されていても手段が追いついていない実態がうかがえます。
※本調査は民間企業による調査です。統計の性質が異なるため、フォークリフトの労働災害統計とは単純に比較できません。
フォークリフト・社用車事故の原因と安全教育
フォークリフトと社用車では、事故が起きる場面も法令が求める教育の枠組みも異なります。原因を押さえたうえで、安全教育の組み立て方を確認します。
フォークリフトの事故の原因
前掲のデータのとおり、フォークリフト災害の中心は走行中の車両と人が接触する「はさまれ・巻き込まれ」「激突され」です。加えて荷役に伴う「墜落・転落」「飛来・落下」「崩壊・倒壊」、車両側の「転倒」が続きます。人と車両の分離、荷の適正な取り扱い、車両の安定性確保が対策の軸です。
資格面の課題もあります。技能講習の修了が義務付けられている一方、同協会が指摘するとおり、この資格に一定期間ごとの更新は求められていません。長年の運転のうちに我流の操作や手順の省略が定着するおそれがあります。
フォークリフトにおける安全教育のアプローチ方法
フォークリフトの安全教育は法令の枠組みに沿って設計します。労働安全衛生法第61条により、最大荷重1トン以上の運転業務には技能講習修了者を就かせなければなりません。そのうえで同法第60条の2は、危険有害業務に現に就いている者への安全衛生教育を事業者の努力義務としており、厚生労働省通達(平成2年3月1日付け基発第114号)で「フォークリフト運転業務従事者安全衛生教育」のカリキュラムが示されています。対象は技能講習等の修了からおおむね5年を経過した者で、おおむね5年ごとの再教育に努めることとされています。
あわせて、労働安全衛生規則が定める作業計画の作成、制限速度の設定、運転位置から離れる際の措置、主たる用途以外の使用の禁止を、日々の「基本行動」として現場に落とし込むことが重要です。
社用車の事故の原因
厚生労働省「交通労働災害防止のためのガイドライン」は、疾病、疲労、睡眠不足、飲酒その他の理由により安全な運転ができないおそれがある状態を、乗務開始前の点呼等で確認するよう求めています。また、早朝時間帯に交通事故による死亡災害が多発していることを踏まえ、走行計画では早朝時間帯の走行を可能な限り避けるよう努めることとしています。社用車の事故防止は、労働時間と走行計画の管理と一体で考える必要があります。
社用車における安全教育のアプローチ方法
新規雇入れ運転者には、労働安全衛生法第59条に基づく雇入れ時教育のなかで、交通法規、運転時の注意事項、走行前点検の励行に加え、前日の十分な睡眠時間の確保、飲酒の影響、睡眠時無呼吸症候群の適切な治療などを教育します。
日常の教育では、警察等からの交通事故発生情報、ヒヤリ・ハット事例、ドライブレコーダーの記録を教材化します。同ガイドラインは、イラストシートや写真で潜在的危険性を予知させる「交通危険予知訓練」の継続実施が望ましいとし、危険箇所を示した「交通安全情報マップ」の作成・配布も挙げています。
「体験」で基本行動を定着させるVR安全教育
フォークリフトでは2023年に1,989件の死傷災害が発生し、社用車でも過半数の法人が年間1件以上の事故を経験しています。守るべき基本行動は法令やガイドラインで明確に示されています。それでも事故が減りきらないのは、知っていることと現場で身体が動くこととの間に隔たりがあるためです。
ガイドラインが交通危険予知訓練を推奨するのも、危険を「予知させる」体験的な要素を教育に組み込む狙いがあるからです。この考え方をさらに進めた手段が、VR(仮想現実)を活用した体験型の安全教育です。明電システムソリューションでは、危険を疑似体験できる「明電VR安全体感教育」を提供しています。基本行動を定着させる手段としてご検討ください。
■参考・出典一覧
| 題名 | 媒体名 | 著者・運営元名 | URL |
| フォークリフトに起因する労働災害の発生状況―厚生労働省労働災害統計より― | 日本産業車両協会Webサイト | 一般社団法人日本産業車両協会 | http://www.jiva.or.jp/pdf/24_SafetyDay_1-1.pdf |
| 交通労働災害防止のためのガイドライン | 職場のあんぜんサイト | 厚生労働省 | https://anzeninfo.mhlw.go.jp/information/koutsuu-guideline_h30.pdf |
| 労働安全衛生法(第59条・第60条の2・第61条)/労働安全衛生規則 | e-Gov法令検索 | 厚生労働省 | https://elaws.e-gov.go.jp/ |
| 法人車両事故と管理に関する実態調査(民間企業による調査) | ― | ― | ― |
| 明電VR安全体感教育(明電の安全ソリューション) | 明電システムソリューション株式会社 | 明電システムソリューション株式会社 | https://www.meidensha.co.jp/mss/ |